UXデザインの教科書 要約

安藤昌也氏の著書『UXデザインの教科書』は、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインを単なる「画面の使い勝手」ではなく、「ユーザーの体験を組織的に設計するための学問・技術」として体系立てて解説した、まさにバイブル的な一冊です。

## 1. UXデザインの定義と「期間」の概念

本書の最大の特徴は、UXを時間軸で捉える「UXの期間モデル」を提示している点です。

* **予期的UX:** 利用する前の期待感。
* **一時的UX:** 利用している瞬間の体験。
* **エピソード的UX:** 利用した直後の振り返りや満足度。
* **累積的UX:** 長期間利用し続けた結果、生活の一部になるような愛着。

> **ポイント:** 優れたUXデザインとは、一瞬の「使いやすさ」だけでなく、使う前のワクワクから使い終わった後の思い出までを設計することです。

## 2. 人間中心設計(HCD)のプロセス

UXデザインを実践するための標準的な枠組みとして、**HCD(人間中心設計)**のサイクルを回すことの重要性を説いています。

1. **利用状況の把握:** ユーザーがどんな場面で、何に困っているかを調査する。
2. **ユーザーニーズの特定:** 調査結果から、ユーザーが本当に求めている価値を抽出する。
3. **設計案の作成:** ニーズを満たすための構造やインターフェースを作る。
4. **設計案の評価:** プロトタイプをユーザーに試してもらい、検証・改善する。

## 3. 構造化シナリオ法

本書で具体的に推奨されている手法が**「構造化シナリオ法」**です。いきなり画面を作るのではなく、以下の3つのレベルで段階的に設計を進めます。

* **バリューシナリオ:** ユーザーがその製品を使ってどんな価値(本質的欲求)を得るか。
* **アクティビティシナリオ:** 価値を実現するために、ユーザーがどのような行動をとるか。
* **インタラクションシナリオ:** 具体的にシステムとどうやり取りするか(ボタンを押す、通知が来るなど)。

## 4. 本質的ニーズを見抜く

安藤氏は、ユーザーが口にする「〇〇が欲しい」という要望をそのまま鵜呑みにすることを戒めています。

* **「やりたいこと(Do)」**の裏にある**「ありたい姿(Be)」**を探ることが重要。
* フォトエッセイやインタビューなどの**調査手法**を駆使して、ユーザー自身も気づいていない潜在的なインサイトを掘り起こす技術が詳しく解説されています。

## まとめ:UXデザインの本質

この本が伝えているのは、**「UXデザインとは、ユーザーの喜びを可視化し、それをビジネスの形に落とし込むための共通言語である」**ということです。
デザイナーだけでなく、エンジニアやマネージャーもこのプロセスを理解することで、チーム全体で一貫した価値を提供できるようになります。